ニコレットの部屋

Le Voyage de Nicolette

120C11(医師法に関する出題)で学ぶ条文の探し方

医事法に関する第120回医師国家試験の出題をもとに、e-Gov法令検索で法律を読む方法を紹介する。

(120回C問題11)
医師法で規定されていないのはどれか。
a 共用試験(CBT、OSCE)
b 医師国家試験
c 医籍登録
d 臨床研修
e 保険医の登録

正答
○ e 保険医の登録 → 健康保険法で規定される。
✕ a 共用試験(CBT、OSCE) → 令和2年入学生(120回受験生)の学年から医師法で義務化された(いわゆる公的化)。

e-Gov法令検索は、現在有効な憲法、法律、政令、省令(勅令や太政官布達も)の全文を閲覧できるサイトである。デジタル庁が運営する。e-Gov法令検索を用いて医師法の条文を確認しよう。

laws.e-gov.go.jp

「医師法」で検索する。

「医師法」「医師法施行令」「医師法施行規則」がヒットする。国家試験対策の範囲では「医師法」だけで十分だろう。

医師法には「政令で定める」「厚生労働省令で定める」と書かれている箇所がある。この部分を詳しく確認したいとき、「政令」については「医師法施行令」を、「厚生労働省令」は「医師法施行規則」を確認すればよい。これは医師法の話でないが、予防接種法におけるB類疾患*1や、感染症法における感染症の分類は、一部が政令(〇〇法施行令)で定められている。

医師法(昭23法201)から、選択肢a 共用試験(CBT、OSCE)に関する条文を抜粋する。

第十一条 医師国家試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、これを受けることができない。
一 大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者(大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験として厚生労働省令で定めるもの(第十七条の二において「共用試験」という。)に合格した者に限る。)
(以下略)

第十七条の二 大学において医学を専攻する学生であつて、共用試験に合格したものは、前条の規定にかかわらず、当該大学が行う臨床実習において、医師の指導監督の下に、医師として具有すべき知識及び技能の修得のために医業(政令で定めるものを除く。次条において同じ。)をすることができる。

確かに共用試験は医師法で規定されている。

——「大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験として厚生労働省令で定めるもの

長い。

ちなみに、医師の守秘義務が刑法で規定されることは国試対策として有名な話だが、臨床実習生の守秘義務は医師法にある(17条の3)。

……大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験として厚生労働省令で定めるものに合格した者の守秘義務は医師法が規定している。

「」

寿限無か。

臨床実習生にも守秘義務があることは、厚生労働省の何かの資料で強調されていたから、今後国家試験に出題されるかもしれない。

次に、キーワード検索を使って、保険医を規定する法律を探してみよう。

e-Gov法令検索のトップページでキーワード検索を実行する。

ヒットする数が多かったので、除外キーワードを指定した。健康保険法(大11法70)にそれっぽいのがあるので条文を見てみる。

第六十四条 保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師又は保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」と総称する。)又は薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)でなければならない。

第七十一条 第六十四条の登録は、医師若しくは歯科医師又は薬剤師の申請により行う。
(以下略)

健康保険法が保険医の登録を規定することを確認した。

再び共用試験に着目する。共用試験の条文は最近足されたもので、国試対策教材には書かれていない。いつ書かれたものだろうか。

e-Gov法令検索では法令の改正を追うこともできる。医師法のページを再度開く。

法令改正履歴から、改正当時の条文を読むことが出来る。条文比較を選択することで、改正された箇所を確認すると、令和5年4月1日改正で医師法に共用試験が明記されたことがわかる。

この方法で過去の条文や改正箇所を探すことが出来る。ただし、ある程度遡るとe-Gov法令検索でたどることができない。この場合、日本法令索引で検索し、国立公文書館デジタルアーカイブや衆議院ホームページで、溶け込む前の「改め文」(改正する箇所だけを記載した条文)を遡ることになる。

「改め文」―法令の一部改正方式―|参議院法制局

改め文の例として、母体保護法から優生保護法に改正されたときの改正法を示す。

法律第百五号(平八・六・二六)
  ◎優生保護法の一部を改正する法律(衆法)
 優生保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
 題名を次のように改める。
   母体保護法
 第一条中「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに」を「不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により」に改める。
 第二条第一項中「優生手術」を「不妊手術」に改める。
(以下略)

改め文では有効な法令の全文を把握するのが難しい。e-Gov法令検索は溶け込んだあとの条文を読めるから、閲覧可能な限りはe-Gov法令検索を使うのが良いだろう。

最後に、社会医学の国試対策に使えるリソースを紹介する。

www.hws-kyokai.or.jp

一般財団法人厚生労働統計協会は、国民衛生の動向がカバーする国家試験の範囲について、過去問を抜粋し、簡単な解説をまとめている。ついでに、厚生労働省が出している国試過去問PDFのハイパーリンクをまとめている。国試直前の社会医学の範囲の確認と、回数別の過去問演習に活用されたい。

*1:B類疾患は、インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症、新型コロナウイルス感染症及び帯状疱疹である。新型コロナウイルス感染症と帯状疱疹は最近追加されたもので、medu4などの一昔前のテキストには書かれていないから、注意してほしい。