ニコレットの部屋

Le Voyage de Nicolette

国試対策神経内科学(脳神経内科・医学生向け書籍)

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2004年に初版された神経内科の入門書。2009年改訂。

最後の改訂が15年以上前であり、内容はところどころ古い。典型例が、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の扱いである。NMOSDは現在、多発性硬化症(MS)から独立した疾患概念として整理されている。しかし本書が刊行(第2版に改訂)された当時は、この区分が一般化する前であったから、本書もそれに基づいている。

診断基準や治療法は日々進化し続けており、神経免疫疾患の分野では特に変化が大きい。そのため、この一冊だけで国試対策を完結させるのは適切とは言い難い。

一方で、神経解剖や神経症候の基本構造は大きく変化していない。本書は前半が神経解剖と症候の整理に当てられているから、15年以上たった今でも入門書として通用する。交叉性片麻痺や失語の分類など、国試対策として十分な内容も多い。

神経解剖を枠組みとして理解すると、個々の神経疾患の疾患概念を理解しやすいし、局在診断にも通用する。国試でも、キーワードを拾うだけでなく、病態や責任病変を考えながら問題を解釈できる。

国試対策教材で知識の羅列を詰め込む前に、このような書籍を1冊通読しておくと役立つだろう。

フェルソン読める!胸部X線写真(放射線診断科・医学生向け書籍)

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胸部写真読影の入門書。胸部写真の基本概念の学習を、ドリル形式で段階的に進める。

本書は所見の暗記よりも、エックス線の透過像である胸部写真がどのような条件でどのように見えるのか、という原理に重点を置く。

胸部写真の入門書には、所見名と疾患名の対応を列挙する形式のものが少なくない。それに対して本書は、エックス線の透過に着目した基本的な概念を出発点とし、画像の見え方から解剖学的構造や病変の位置、病態を解釈する思考過程を説明する。シルエットサインもお手の物。本書のような丁寧な導入は、近年では少ない。

本書の目的は、所見の名称を判別する能力を短期間で習得させることではない。そのため、この一冊だけで実臨床の読影をすべてこなせるようになるわけではない。しかし、通読すれば、胸部写真を見たときに病変の局在や病態を考える、基本的な枠組みが身につく。

医学生の段階では、特定の所見が示唆する具体的疾患の対応を機械的に覚えるよりも、読影の総論を理解し、思考過程を育てることが重要である。本書はその基礎をつくるテキストであり、胸部写真読影の導入に適すると考える。

120C11(医師法に関する出題)で学ぶ条文の探し方

医事法に関する第120回医師国家試験の出題をもとに、e-Gov法令検索で法律を読む方法を紹介する。

(120回C問題11)
医師法で規定されていないのはどれか。
a 共用試験(CBT、OSCE)
b 医師国家試験
c 医籍登録
d 臨床研修
e 保険医の登録

正答
○ e 保険医の登録 → 健康保険法で規定される。
✕ a 共用試験(CBT、OSCE) → 令和2年入学生(120回受験生)の学年から医師法で義務化された(いわゆる公的化)。

e-Gov法令検索は、現在有効な憲法、法律、政令、省令(勅令や太政官布達も)の全文を閲覧できるサイトである。デジタル庁が運営する。e-Gov法令検索を用いて医師法の条文を確認しよう。

laws.e-gov.go.jp

「医師法」で検索する。

「医師法」「医師法施行令」「医師法施行規則」がヒットする。国家試験対策の範囲では「医師法」だけで十分だろう。

医師法には「政令で定める」「厚生労働省令で定める」と書かれている箇所がある。この部分を詳しく確認したいとき、「政令」については「医師法施行令」を、「厚生労働省令」は「医師法施行規則」を確認すればよい。これは医師法の話でないが、予防接種法におけるB類疾患*1や、感染症法における感染症の分類は、一部が政令(〇〇法施行令)で定められている。

医師法(昭23法201)から、選択肢a 共用試験(CBT、OSCE)に関する条文を抜粋する。

第十一条 医師国家試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、これを受けることができない。
一 大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者(大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験として厚生労働省令で定めるもの(第十七条の二において「共用試験」という。)に合格した者に限る。)
(以下略)

第十七条の二 大学において医学を専攻する学生であつて、共用試験に合格したものは、前条の規定にかかわらず、当該大学が行う臨床実習において、医師の指導監督の下に、医師として具有すべき知識及び技能の修得のために医業(政令で定めるものを除く。次条において同じ。)をすることができる。

確かに共用試験は医師法で規定されている。

——「大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験として厚生労働省令で定めるもの

長い。

ちなみに、医師の守秘義務が刑法で規定されることは国試対策として有名な話だが、臨床実習生の守秘義務は医師法にある(17条の3)。

……大学において医学を専攻する学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験として厚生労働省令で定めるものに合格した者の守秘義務は医師法が規定している。

「」

寿限無か。

臨床実習生にも守秘義務があることは、厚生労働省の何かの資料で強調されていたから、今後国家試験に出題されるかもしれない。

次に、キーワード検索を使って、保険医を規定する法律を探してみよう。

e-Gov法令検索のトップページでキーワード検索を実行する。

ヒットする数が多かったので、除外キーワードを指定した。健康保険法(大11法70)にそれっぽいのがあるので条文を見てみる。

第六十四条 保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師又は保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」と総称する。)又は薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)でなければならない。

第七十一条 第六十四条の登録は、医師若しくは歯科医師又は薬剤師の申請により行う。
(以下略)

健康保険法が保険医の登録を規定することを確認した。

再び共用試験に着目する。共用試験の条文は最近足されたもので、国試対策教材には書かれていない。いつ書かれたものだろうか。

e-Gov法令検索では法令の改正を追うこともできる。医師法のページを再度開く。

法令改正履歴から、改正当時の条文を読むことが出来る。条文比較を選択することで、改正された箇所を確認すると、令和5年4月1日改正で医師法に共用試験が明記されたことがわかる。

この方法で過去の条文や改正箇所を探すことが出来る。ただし、ある程度遡るとe-Gov法令検索でたどることができない。この場合、日本法令索引で検索し、国立公文書館デジタルアーカイブや衆議院ホームページで、溶け込む前の「改め文」(改正する箇所だけを記載した条文)を遡ることになる。

「改め文」―法令の一部改正方式―|参議院法制局

改め文の例として、母体保護法から優生保護法に改正されたときの改正法を示す。

法律第百五号(平八・六・二六)
  ◎優生保護法の一部を改正する法律(衆法)
 優生保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
 題名を次のように改める。
   母体保護法
 第一条中「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに」を「不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により」に改める。
 第二条第一項中「優生手術」を「不妊手術」に改める。
(以下略)

改め文では有効な法令の全文を把握するのが難しい。e-Gov法令検索は溶け込んだあとの条文を読めるから、閲覧可能な限りはe-Gov法令検索を使うのが良いだろう。

最後に、社会医学の国試対策に使えるリソースを紹介する。

www.hws-kyokai.or.jp

一般財団法人厚生労働統計協会は、国民衛生の動向がカバーする国家試験の範囲について、過去問を抜粋し、簡単な解説をまとめている。ついでに、厚生労働省が出している国試過去問PDFのハイパーリンクをまとめている。国試直前の社会医学の範囲の確認と、回数別の過去問演習に活用されたい。

*1:B類疾患は、インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症、新型コロナウイルス感染症及び帯状疱疹である。新型コロナウイルス感染症と帯状疱疹は最近追加されたもので、medu4などの一昔前のテキストには書かれていないから、注意してほしい。

120回医師国試を受験して思うことなど

国試対策についての所感

医師国家試験は新卒医学生の約95 %程度が合格する試験である*1。重要なのは合格ラインに達することで、合格さえすればその得点率に意味はない*2

国試に合格する方法は医学生だれしもが気にするが、人によって国試医学を学習し始める時点の知識量も成長曲線も全く異なるから、人によるとしか言いようがない。

国試1日目の朝に「必修ってなんですか」と言い放った某君の国試対策はQBを一周解いただけらしかったが、般臨で9割以上得点していた。彼は何もしなくても合格しただろう。

特殊な例を考慮せず、一般的な医学生が国試に合格するための、再現性のある勉強法を聞かれたら、国試対策教材の通年講座も直前講座も模試もすべて購入するのがいいと答えておく。

ただ実際には、私の周囲で直前講座を購入した学生は少数であった。

国試対策教材を提供する会社の記事には「○月に勉強時間12時間!」と書いてあるし、模試も当然受けるものという空気が漂う。でもそれは、国試対策教材を売りたい人たちが、国試は大変だというポジションを取っているに過ぎない*3

特に、低学年のうちは大学の講義に乗ればいい。少なくとも、臨床実習の時間を削ってまで知識の詰め込みに努めるのは本末転倒だろう。臨床実習で医学生は、患者さんと深くコミュニケーションし、ガイドラインや二次資料を漁り、画像を読み、カルテを書き、プレゼンテーションし、手技を経験する。

実務なき資格に価値はない。チーム内での実務を通して、抽象的で暗黙知的なスキルや職業倫理を形成する重要な時期であるのに、その機会を自ら減らすのは勿体無い(大学によっては、臨床実習なのに何故か筆記試験をやるところもあるようだから、落第しない程度には知識の詰め込みも頑張ってほしい)。

厚労省のWebページで国試出題基準の検討を読めば分かるように、近年の国試は真面目に実習することが国試対策にもなる*4。実際、120回で出題された抜糸の問題やSLEのGC以外の治療に関する問題は、臨床実習で経験していなければ難問奇問の部類に入るだろう。

しかし、ほとんどの人にとって、「国試のための勉強」を全くしない状態で受験したら流石に落ちる。経験していないと難しい"臨床実習枠"の問題が増えた昨今でも、国試対策をしていれば皆が解ける問題は依然として相当数確保されている(きっと出題者も、"臨床実習枠"のすべてを解くことは期待していないだろう)。国試対策教材販売業者のポジショントークに載せられておくくらいが丁度いいのかもしれない。

過去問を回数別で解くべき年数

巷で言われるセオリー通り5年分でいいと思う。

筆者は、必修問題*5 に限り10年分演習した。これは必修がもつ独特の雰囲気に慣れることを目的とした。

演習の際は、回数とは別に、出題基準を念頭に置くとよい。直近(118回からは令和6年基準で作成されている)のほうが、構成や難易度が本番に近い。

過去問PDFの探し方

クエスチョンバンクで完結しても十分であろうが、筆者は冊子形式に慣れるために厚生労働省のPDFを使った。

医療分野のトピックス|厚生労働省

↑このページで「回医師国家試験」と検索する。すると問題PDFが貼られたページがヒットする。単に「医師国家試験」だと歯科医師国家試験を巻き込む。

国試過去問ハイパーリンク集

↑厚労省の過去問PDFのリンクをまとめておいた。

暗記ノートをどこまで完成させるべきか

筆者はmedu4あたらしいシリーズの空欄を穴埋めし、暗記ノートとした*6

正直、暗記ノートの全てを完璧にする必要はない。病態は説明できるようにしたいが、マイナーな疾患の細かい知識が入ってなくても点数に大きく影響しない*7。全てを完璧にしていなくても模試で平均少し上くらいになるし、本番でも8割以上得点できる。暗記ノートガチ勢の友人は模試で偏差値60程度だった。

最後に

繰り返すが新卒の95 %程度は国試に合格する。何もしなくてもいいとは言わないが、過度に重圧を感じる必要もない。国試がインフレしていると言われるが、出題基準が変化しているのだから、標準的な点数が変わるのも自然のことである。

最後に必要となるのは、問題文を読み飛ばさない力だと思う。過去問演習のときから読み飛ばさない癖をつけたい。筆者は、臨床実地問題は文頭から読み始め、抽象的でも病態や鑑別を想起しながら読み進めるよう心がけた。試験時間は十分にあるから、自分の知識量以外のところで失点しないよう、焦る気持ちを抑えて落ち着いて臨みたい。

それから、大学から案内がなく個人的に不安だったのが、卒業証明書の提出についてである。新卒の場合、出願のときに受験者は卒業見込み証明書を提出する。この場合、厚生労働省は受験者に、3月10日14時までに卒業証明書を提出するよう求めている。これは大学が一括で提出してくれた。

わたしの国試前後のカレンダー

(7月~12月 卒業試験 対策としてmedu4とQB科目別)

7-8月頃 就職活動
履歴書用に写真を準備する。その際に、医師国家試験の願書に貼るための、縦6 cm、横4 cmの写真を作っておくとよい。出願*8前6か月以内であれば使える。

10月上旬 大学から出願の案内

10月上旬 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の取得
筆者は本籍地から離れて生活し、かつ、本籍地がコンビニ交付に対応していなかったから、居住自治体の市役所で「広域交付」を受けた。

法務省:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

10月下旬 医師国家試験の出願(大学経由)

(12月下旬から厚労省PDFで回数別)

(1月上旬に模試を受験)

(1月下旬は回数別で怪しかったところをQB問題セットで周回)

1月下旬 受験票配布

1月下旬 卒業判定(受験票配布後なのはひどくないか?)

2月7-8日 国家試験本番

3月上旬 免許申請の準備
収入印紙の購入、申請書の記入、診断書の取得。
戸籍謄本は発行6か月以内であれば使えるから、国試の出願のときに提出し返却されたもので足りる。

3月16日 合格発表、即日免許申請、登録済証明書のオンライン申請

3月18 合格証書及び成績通知書のはがきが到着

3月23日 医籍登録

3月24日未明 資格確認検索に反映、登録済証明書の交付完了

私の周囲では、京都府は早く、北海道は遅い傾向でした。医籍登録にかかる時間は都道府県(保健所)に依存していそうです。

*1:合格率を下げる話の出所は財務省であり、厚生労働省に対して、医学生を減らさないならと脅しで言ったにすぎない。国試を実施する厚生労働省が現時点で検討しているものではない。

*2:厚生労働省は、禁忌設定の是非を確認するために、行政処分歴と禁忌選択数の関係を調べたことがある。この調査が成り立った事実から、厚生労働省は、国試の得点と禁忌選択数を医師個人に紐づけられる状態で保持している、と筆者は考える。勇気がある方は保有個人情報の開示請求をしてみてほしい。

*3:一方で、この記事の筆者が「もう二度と国試を受けなくていい」「誰の国試にも責任を負わなくていい」ことを、読者は認識すべきだ。

*4:医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会の適当な参考資料を読めば、臨床実習の経験を評価する内容にフォーカスしていくというようなことが書いてある。他にも禁忌肢設定やCBT化の考え方が書いてあるから一読されたい。

*5:必修問題はB問題、E問題。111回以前は3日間9ブロック制であったから構成が異なり、必修問題はC問題、F問題、H問題である。

*6:medu4テキストは、ほとんどの空欄に穴埋めすべき文字列が白字で書かれているから、pikepdfを使えば簡単に穴埋めできる。

*7:ただし、ある程度まではインプットの出来が点数に大きく影響する。点数が伸びないのであれば、それはインプット不足かもしれない。メジャー疾患、頻出項目を確実に暗記できているだろうか。本文の趣旨は、medu4の空欄を99.9 %誦じるまでは不要というものである。

*8:大学に提出する日でなく、厚労省(実際には委託を受けるランスタッド)が受け取る日から起算するものと思われる。大学は取り次いでいるに過ぎない。