ニコレットの部屋

Le Voyage de Nicolette

日本最長のフェリー/新日本海フェリーの申請上の航路を開示請求でみる

日本の長距離フェリー航路

長距離フェリーは「旅客フェリーのうち、片道の航路距離が300km以上で、陸上輸送のバイパス的な役割を果たす船舶」とされます(1)。長距離フェリーを運航する事業者のほとんどは業界団体「日本長距離フェリー協会」に加盟します(加盟しない川崎近海汽船シルバーフェリー」の宮古〜室蘭航路は航路距離333.4kmですが、休止中または廃止済みですから、それを無視すればすべての事業者が加盟しているはずです)。

日本長距離フェリー協会WEBサイトに用意されている航路案内のコンテンツ(2)によれば、長距離フェリーを運航する事業者は8つ、航路が15あります。航路距離が最も長いのは太平洋フェリーで、その長さは1,330kmです。

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申請上の航路との違い

長距離フェリーすなわち一般旅客定期航路事業は令和6年現在許可制であり、事業は航路ごとに許可されます。許可を受けるために事業者は運輸局に申請書を提出します。海上運送法施行規則(3)や一般旅客定期航路事業の申請案内(4)によれば、事業許可申請書に航路(起点、寄港地及び終点)が記載されています。運航計画として使用船舶明細書も提出されるようですがそれはまた別の話。

『数字でみる港湾2022』の長距離フェリー航路一覧における航路の記載は事業許可に忠実で、ここでの航路数は12とされています(5)。これは日本長距離フェリー協会の航路案内で確認できる航路の数(15航路)と異なります。

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新日本海フェリーの航路

新日本海フェリーは「舞鶴敦賀〜新潟〜秋田〜小樽〜苫小牧」の1航路で事業許可を受け、その許可をもとに4航路を運行しているようです。行政文書の開示請求制度(6)を利用して、申請書*3における航路の記載を見てみましょう。

航路は舞鶴港を起点、苫小牧港*4を終点とし、敦賀港、新潟港、秋田港、小樽港を寄港地とする一本の航路とされています。

区間距離では全ての組み合わせで距離が記載されています。海里(nautical mile)は「浬」の一字で表せるのですね。新潟と秋田のキロ程が変わったのか、一部斜線が引かれています。

舞鶴〜苫小牧は1,818km(982浬)と書いてあります。これは舞鶴敦賀敦賀〜新潟、新潟〜秋田、秋田〜小樽、小樽〜苫小牧の距離を単純に足しただけです。新幹線の営業キロと実キロの関係のようなものと理解しました。しかし新幹線と異なり、距離をもとに運賃を決めてはいません。航路距離が過大であっても問題ないのでしょう。

新日本海フェリーは配船の都合で変則的な運用をすることがあります。関西〜北海道航路や新潟〜北海道航路で小樽と苫小牧を入れ替えて運行することがありますが、4航路を包括した1件で事業申請しているために柔軟な運用ができるのだと思います。

鉄道の停車駅案内風に航路のイメージを作成

結論

配船の都合でたまに運行される、新日本海フェリー 舞鶴〜苫小牧東が「営業キロ」としては日本最長のフェリーである。

*5 *6

参考

1) 『海事局用語集 た行』国土交通省海事局
https://www.mlit.go.jp/maritime/dic/ta.html

2) 『航路案内』一般社団法人日本長距離フェリー協会
http://www.jlc-ferry.jp/kouro.html

3) 海上運送法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324M50000800049

4) 『一般旅客定期航路事業の申請案内』国土交通省関東運輸局
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/kaiji_sinkou/unkou/shinsei_todokede.html

5) 国土交通省港湾局監修『数字でみる港湾2022』公益社団法人日本港湾協会

6) 『情報公開及び公文書管理』国土交通省
https://www.mlit.go.jp/appli/file000009.html

 

*1:航路距離は日本長距離フェリー協会の航路案内から。

*2:航路距離は、九州発着の航路に限り九州運輸局の資料を参照。その他の航路は『数字でみる港湾2022』の一覧から。

*3:航路の起点、寄港地及び終点を記載する最新の申請書として、平成23年6月14日付の一般旅客定期航路事業の事業計画変更認可申請書を請求した。

*4:苫小牧東港は苫小牧港の一部である(苫小牧港東港区周文埠頭)。

*5:1,818kmは、離島航路を含めても国内最長のはず。

*6:もっとも、距離により運賃を決めないから営業キロという考え方を持ち込むのは無意味であろう。