ETC2.0「賢い料金」の制度の理解のため実験を行ったので、その結果をまとめます。「賢い料金」は指定の道の駅を利用するための途中退出であれば継続利用とみなす制度ですが、実証実験中でもあり理解できていない点が多いので、実験として走行したものです。
結果を端的に述べると、一部が正しく継続走行と判定されない箇所がありましたが、問い合わせたら修正してもらえました。正しく判定されなかったのは、経路に無理があったからで、機械的に継続と判断されなくても仕方のないことだと思っています。
経緯
高速道路の料金制度については、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と高速道路各社の協定(別紙8中料金算定の特例)に記載されています。周回走行、迂回時の扱いや、首都圏における起終点を基本とした継ぎ目のない料金(首都圏シームレス)についても書かれている、通行料のいわば公式ルールブックですが、ETC2.0車がインターチェンジで一旦退出し、指定された道の駅を利用した後、乗り直しても料金が据え置きになる制度「賢い料金」については書かれていません(見つけられていないだけであれば指摘いただけますと幸いです)。
「一時退出しても追加料金なしに」と言われても、本当に退出していないものとして扱ってくれるのか? と問い詰めたくなります。私が気になるのは以下の点です。
- 複数回の途中退出に対応しているのか。
- 迂回した場合、通常、最短経路の2倍以下であれば最短経路と同じ額が徴収される(超える場合を超倍走行と呼び、この場合は走行経路に基づいて料金が算出される)。これは一時退出しても同じか。それとも、一時退出によって料金所を通過して経路を確定できるから、実際の走行経路に基づいた額が徴収されるのか。
- ETCの履歴上は走行が複数になるが、深夜割引は全体に適用されるか。
実験
ETC2.0「賢い料金」制度の理解のため、次のような経路を走行しました。最終目的地であるつくば中央ICは午前0時すぎに通過し、深夜割引の適用も確認することにしました。
森掛川→E1A新東名下り(一時退出 新城‐道の駅もっくる新城)→豊田東JCT→名C3東海環状→土岐JCT→E19中央道→岡谷JCT→E19長野道→更埴JCT→E18上信越道→藤岡JCT→E17関越道下り(一時退出 高崎玉村スマート‐道の駅玉村宿)→高崎JCT→E50北関東道→岩舟JCT→E4東北道→久喜白岡JCT→C4圏央道外回り(一時退出 五霞‐道の駅ごか)(一時退出 常総‐道の駅常総)→つくば中央
4回退出しますので、ETCの履歴は5つになります。
一時退出しなかった場合、料金所の通過は流入:森掛川、流出:つくば中央だけになります。この最短経路は新東名→東名→圏央道であり、本実験での走行経路は最短経路の2倍以下です。
なお、首都高経由に対しては2倍を超えていますが、今回は「首都圏中央連絡自動車道等経路」(協定上の表現)なので、比較される最短経路は新東名→東名→圏央道となり、超倍走行になりません。このあたりは少々ややこしいですが、起終点を基本とした継ぎ目のない料金のルールによるものです。起終点を基本とした継ぎ目のない料金を題材にした記事は他の方がわかりやすく書かれていたと思います。そちらをご覧になってください。
この経路の走行によって上に書いた3点の疑問を検証します。
- 複数回の途中退出を行う。
- 超倍走行にならない範囲で迂回走行を行う。
- 流出ICのつくば中央ICは日付をまたいでから通過する。
結果
走行後、ETC利用照会サービスで通行料の確認を行いました。「賢い料金」の適用が確定時になされるので、走行してから2週間ほど待ち、確定後の明細で乗り直しの判定を確認しました。
確定直後の明細で正しく判定されていなかったため、東日本高速道路に問い合わせたところ、修正してもらえました。
確定直後=修正前
第一走行(森掛川→新城)
880円 休日割引
第二走行(新城→高崎玉村スマート)
6680円 休日割引
第三走行(高崎玉村スマート→五霞)
2310円 休日割引
第五走行(常総→つくば中央)
50円 深夜割引・乗継調整
※つくば中央インターチェンジを翌日0:03に流出
合計 10480円
新城、高崎玉村スマートでの途中退出は乗り直しと判定されませんでした。五霞、常総での退出が乗り直しと判定されています。第四走行まで休日割引と表記されていますが、高崎玉村スマート〜つくば中央が深夜割引相当額となるよう第五走行で乗継調整されています。
問い合わせ後=修正後
第一走行(森掛川→新城)
880円
第二走行(新城→高崎玉村スマート)
4910円
第三走行(高崎玉村スマート→五霞)
0円
第五走行(常総→つくば中央)
0円
合計 5790円
最短経路(新東名→東名→圏央道)、深夜割引(深夜割引や休日割引がかかる場合は圏央道ETC2.0割引の設定がない)での通行料と同額です。
なお、走行時の利用はすでに確定されているため、マイナス売上を別で計上して相殺しています。下の画像では新たに計上された分のみ示しています。
考察
当初の疑問1~3に沿うように記述します。
0. 問い合わせによって修正してもらえる
まずこの点を記載しておく必要があるでしょう。東日本高速道路に問い合わせたところ、合計金額が本来の徴収額となるよう通行料を調整してもらえました。流出ICのつくば中央ICを管轄する東日本高速道路に問い合わせましたが、中日本高速道路でも調整できるのかはわかりません。
1. 複数回の一時退出は問題ない
4回の途中退出を行ったが、いずれも最終的に乗り直しと判断されました。問い合わせ前の時点ですでに五霞、常総の2箇所の途中退出が乗り直しと判定されており、複数回であっても今回のような複雑な経路でなければ機械判定できると思われます。
2. 通行料は最短経路から算出される
迂回しても退出していないものとして通行料が計算されています。一時退出によって迂回途中のICを通過した履歴が残っても、経路確定では無視されました。
ただし、迂回だと機械的には折り返しと判断されうるので利用明細書の確認をおすすめします。高崎玉村スマートは上下線で料金所が別になっていますが、それでも同一方向の走行と判定されなかったのは興味深い結果でした。順方向であるかの判断は流入及び流出ICの名称をもって推測しているのでしょうか。
なお、ETC2.0には位置情報を送信する機能がありますが、送信された位置情報は通行料の算出には用いられていないとも推測できます。
3. 深夜割引は全体に適用される
あくまでも一回の走行とみなされました。これは外環道を経由して走行が3つになったときと同じ運用ですね。
結論
ETC2.0であれば指定の道の駅が「一時退出しても追加料金なしに」利用できると説明されていますが、今回の結果はこの説明に矛盾しないものでした。おそらく本当に退出しなかったものとして扱われるのだと思われますが、慎重に慎重を重ねて、今回実験した範囲ではそうだった、と結論付けるに留めておきます。